2023.11.16

「中之条町モデル」で取り組むインバウンド対策、観光名所28ヵ所のGoogleマップで情報発信 / 中之条町 観光商工課

群馬県吾妻郡の観光の中心地である中之条町(なかのじょうまち)にて2023年9~10月に開催された国際現代芸術祭「中之条ビエンナーレ2023」。

インバウンド需要が回復しつつある今年、中之条町はイベント集客の新たな施策として、SO Technologies株式会社(以下、SOT)の店舗集客支援サービス「ライクル」を通じて、観光スポットのGoogle マップを活用した情報発信とデータ分析、“面的DX”を実施しました。

今回は、イベント開催に伴って実施したGoogle ビジネスプロフィールへの期待値や活用方法、今後の展望について伺いました。

お話を伺ったのは、中之条町 観光商工課観光係 主事 齊藤 陸空様と、中之条町を含む群馬エリアの地域課題解決を支援している株式会社ジェイアール東日本企画 高崎支社 営業第二部ディレクター 三世川 将広様です。

Sammary

ご利用企業名
中之条町 観光商工課
ご利用期間
2021年~現在
効果・成果
観光スポット28ヵ所のGBP情報を登録
「中之条町ビエンナーレ2023」情報を、月間1~2万(/スポットあたり)ユーザーが閲覧するGBP上で発信
イベント来場者数約1.3~1.5倍の集客に寄与
  • 中之条町 観光商工課 観光係 主事
    齊藤 陸空 氏

    観光統計と観光施設の管理を担当。2023年度よりGoogle ビジネスプロフィール関連業務も担当している。

  • 株式会社ジェイアール東日本企画
    高崎支社 営業第二部ディレクター
    三世川 将広 氏

    JR東日本やJRグループ会社の広告宣伝、イベント運営や群馬県及び県内市町村の地域課題解決プロジェクトに取り組む。

中之条ビエンナーレについて

ビエンナーレを機に定住者が増えアーティストの拠点にも。町が誇る一大イベント

今回、「中之条ビエンナーレ2023」の認知や集客を目的としてGBP施策を実施しました。中之条ビエンナーレの概要をお教えください。

齊藤氏2年に1度開催される、町内全体が美術館となるイベントです。各所でアートの展示や演劇などのパフォーマンス、マルシェなどを約1ヶ月間かけて行います。第9回となる2023年は町内の5エリアに44ヵ所の会場を設けていて、国内外合わせて125組のアーティストが参加しました。

※「中之条ビエンナーレ2023」は終了しています。

地方創生・地域活性化などの文脈でも成功事例として取り上げられており、注目度の高いイベントです。中之条町としてビエンナーレはどのような位置づけにあるのでしょうか。

齊藤氏町が誇れるイベントだと考えています。私自身が入庁する以前から実施されていますが、最初は町民の理解を得るところからスタートし、回数を重ね、累計来場者数は第1回の4万8千人から、21年には30万人強まで増える大規模なイベントとなっています。

観光客の増加に伴う経済効果も大きいのでしょうか。

齊藤氏:直接の担当ではありませんが、実際に「ビエンナーレでこんなに売上が上がりました」という声もたくさんいただきます。町の観光課題として観光客が訪問する地域の偏りがありますが、点々としている会場を自然に周遊を促すスタンプラリーも作り、市街地だけではなく遠方エリアにもご来場いただいています。

そして、ビエンナーレに参加し、イベントを通して中之条町が好きになり、移住してくださる作家さんが年々増えています。中之条町がアーティストの方々の拠点となる場所になっているのかなと感じます。

素晴らしい取り組みですね。

Google ビジネスプロフィール活用背景

建物以外を登録できることに驚き。他地域からも注目を集める事例になった

Google ビジネスプロフィール(以下、GBP)活用にはどのような期待をお持ちだったのでしょうか。

齊藤氏コロナ禍明けのインバウンド需要に向けた環境整備に重要なものであり、その効果を期待しています。観光パンフレットや施設サイトの多言語化しかできていなかったので、大規模的なインバウンド施策はGBPの取り組みが初めてです。また、事業者様にデジタル化への関心を持っていただくきっかけになってほしいという期待もあります。

インバウンド施策として、多言語化に続き二歩目の施策になったと。

齊藤氏:そうですね。さらに、今回のGBP活用は中之条町がデジタルでの情報発信に注力した初の事例とも言えます。ビエンナーレに限らず宣伝・集客面は観光協会に委託しているため、中之条町としての情報発信は町報などの紙面がメインでした。唯一運用しているLINE公式アカウントも発信としてはあまり利用していない状況です。

三世川氏:GBPのご相談を中之条町様からいただいたのは21年ごろでしたが、当時コロナ禍がここまで長引くとは思っておらず、インバウンド対策が重要な認識はある一方で別の施策を優先する状況が続きました。今年になってようやくインバウンド関連施策に注力できるようになったと感じています。

今回の取り組み対象ではないですが、町内事業者様のGBP活用状況はいかがでしょうか。

三世川氏:2021年からGBP関連事業が始まったのですが、コロナ禍という状況もあり、約2年間は国内事業者様向けのセミナーや情報登録などを中心にご支援してまいりました。(活用されている事業者の)数としては正直少ない状況ですので、今回の町での取り組み実績をフィードバックして広げていきたい期待もあります。

今回実施したのは、観光名所のGoogle ビジネスプロフィールの情報を整備し、情報発信を行う「面的DX」と呼ばれる取り組みです。率直なご感想をお聞かせください。

齊藤氏:まず、建物以外を登録できることは知りませんでした。普段から、四万湖や足湯がどこにあるのかといった観光スポットに紐づくお問い合わせが多いので、観光スポットのGBPを管理するご提案が非常にありがたかったです。Google マップ上にピンが立てられればご自身で検索いただくことができますので。ビエンナーレを絡めたGBPでの情報発信自体が新しい取り組みで、まさに工夫した点になったと思います。

三世川氏:私自身も知らなかったので、シンプルにすごいなと。中之条町様と無人施設や観光地28ヵ所の登録・運用実績をきっかけに、他の自治体様からもお問い合わせをいただくようになりました。多くの自治体にはまだ知られていない取り組みであり、反響は大きいと感じていますね。

Google マップに登録した観光名所28ヵ所

成果・今後の展望

観光地のGBPは月数万人が閲覧するメディア。「中之条町モデル」の取り組みが広がる

ビエンナーレの集客状況や、今回の取り組みによる成果実感はいかがでしょうか。

齊藤氏GBP情報は奥四万湖で月間20,000人、河原の湯で月間15,000人が閲覧しており、かなりの観光客の方が見ているメディアでもあります。宣伝を委託している観光協会からもSNSやメディアでの情報発信を行っていた効果もありますが、パスポートやガイドブックの売れ行きが非常に良く、前回の1.3~1.5倍の来場客を見込んでいます。体感ですが、内1~2割は海外の観光客の方です。(※イベント開始約1週間後の取材時点)

三世川氏GBPをひとつのメディアと捉えていいと思っています。観光スポットのGBP情報を自治体が管理でき、プラス情報発信できる状況は非常にめずらしいのではないでしょうか。事業者様への運用サポートとは別に、町で管理できる施設はしっかり活用できる状態にする今回の取り組み例は、中之条町モデルと言ってもいいのではないのでしょうか。

実際に先進的な取り組みであり、多くの自治体が参考にできる事例だと思います。

今後、GBPをどのように活用していきたいとお考えでしょうか?

齊藤氏GBPは非常にポテンシャルの高いツールです。今回は中之条ビエンナーレの宣伝や情報発信に利用しましたが、今後はデータの活用や他のイベントでの宣伝への活用などに期待しています。

観光係の中でも管轄施設が多岐にわたっているので、クチコミが通知されることで、自分達の手が届かないところの要望に答えられるようになったと感じています。観光客のニーズを知れたり、それをデータにして新しい取り組みができたりするので、私どもにとって大きなプラスになりました。余地はまだまだ残されていそうなので、SOT様には様々な視点から活用方法をご提案いただきたいと思っています。

今後の集客・誘客の戦略や施策決定においてもデータ活用がテーマとなりますね。今回得たクチコミやキーワードなどのデータは今後の戦略に活かしていただければと思います。

三世川氏:どの自治体様や事業者様にとっても、データは非常に重要なものだと認識しています。データ連携部分にはもっと可能性があると考えています。例えばJRグループが保有している鉄道データと中之条町様のGBPのデータを連携できたとすると、さらに精度があがり先進的かつ発展性のある取り組みができるのではないかと思います。

また、中之条町様の外に目を向けると、まだGoogle マップの活用方法を知らないという自治体様や事業者様が少なくありません。それもこの「中之条町モデル」ができたことで、県内外に広げやすくなったのではないでしょうか。この中之条町モデルを広げていくことが私の野望です。

メッセージ

すべての自治体が取り組めばよりGoogle マップが使いやすくなる

最後に、同様に観光領域やGBP活用に課題を抱える自治体の方に向けて、アドバイスとメッセージをお願いいたします。

齊藤氏Google マップのユーザーは非常に多いので、まずは観光施設やイベントの登録から進めていくといいのではないでしょうか。今回、登録を進めてデータが集約できるようになり、活用の可能性が見出せました。もしすべての自治体が取り組んでいただければ、多くの方が使いやすくなるのだろうな、と思いますのでぜひおすすめしたいです。

三世川氏:情報が少ないなど、なんとなく管理されていないことが伝わると、GBP上の情報の信用性自体がなくなってしまいます。ユーザー目線で見たときに、GBPの情報をきちんと載せていくことは大切ですよね。

齊藤氏:観光案内をしていると、Google マップにきちんと登録していれば、直接調べてくださる方がいることがよくわかります。管理することで問い合わせが減り、結果的に事務的な手間も削減されるので、プラスが大きい取り組みです。

さいごに

今回は、中之条町の齊藤様とジェイアール東日本企画社の三世川様からお話を伺いました。

私たちにとってGoogleマップは身近な存在ですが、観光スポットを管理・運用している自治体はまだまだ多くありません。活用次第で、集客や宣伝はもとより来訪するユーザーが利用しやすい環境に一歩近づけることが可能です。

中之条町では、今回得たデータの活用方法を模索し、次の発信やイベント活用につなげていきたいとのこと。ライクルとしても、ジェイアール東日本企画社とともにデータ活用や今後の観光戦略の後押しをご支援してまいりたいと思います。

この度は、貴重なお話をありがとうございました!

  • <インタビュイー>
    SO Technologies株式会社
    プロダクト横断支援推進室 室長 / ライクル事業本部 パートナーセールス
    今井 暁史

    店舗事業者、地方自治体、観光協会等へのGoogle ビジネスプロフィールの運用支援、セミナー講師などを担当。

企業情報

  • 中之条町
  • 株式会社ジェイアール東日本企画
    • 本社所在地:東京都渋谷区。1988年創業。広告事業を主体に、交通メディア、地方創生・地域活性化、コンテンツビジネス、デジタルサイネージ導入・運用支援サービスと幅広く展開。
    • コーポレートサイト: https://www.jeki.co.jp/ open_in_new

ライクルについて

Google ビジネスプロフィールの一元管理を実現。
正確な店舗の情報をGoogle マップや検索画面に表示させ、集客まで支援します。

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